日本内科学会生涯教育講演会に出席しました。 |鳥取県鳥取市気高町の内科・呼吸器内科クリニック

日本内科学会生涯教育講演会に出席しました。
日本内科学会生涯教育講演会に出席しました。 2014:09:22:07:54:00

2014.09.22(更新日:2014.09.22)

9/21(日)に、京都の国立京都国際会館で開催された、日本内科学会生涯教育講演会に出席しました。

朝5:00に家を出発し、9:25から15:35まで講義を受け、夜に帰ってきました。
往復で約500kmの運転でした。

演題は以下の9つで、いずれも日常臨床を行う上で、役立つ内容でした。

  1. ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の自然史理解に基づく胃癌診療
  2. 自己免疫性膵炎からみたIgG4関連疾患の概念
  3. 糖尿病の診断と治療最前線
  4. 治療抵抗性高血圧症の診断と治療最前線
  5. 頭痛の病態生理と治療
  6. 多発性硬化症の病態研究と治療の進歩
  7. 抗リン脂質抗体症候群の検査と治療
  8. 関節リウマチの診断と治療 ~Up to date~
  9. 高齢者救急診療のピットフォール

この中で、印象に残った内用を紹介します。

和歌山県立医科大学第二内科、一ノ瀬雅夫先生の「ヘリコバクター・ピロリ(HP)感染胃炎の自然史理解に基づく胃癌診療」の講演の中で、HP感染から胃癌発生に至る主なルート(HP感染→慢性萎縮性胃炎→腸上皮化生→胃癌)は60%で、残り40%は十分解明されていないという話がありました。
例としましては、慢性活動性胃炎が直接的に未分化癌を発生させるルートがあることを強調されていました。

また、現時点で、ABC検診(HP抗体の有無と胃粘膜萎縮の有無から、胃癌のリスクを4つのグループに分類するもので、1回の採血で行えます)を積極的に取り入れるのは無謀であり、非常に慎重に行う必要があるという話がありました。
萎縮性胃炎が進行すると、HPが住める場所がなくなり、抗体陰性となります。
しかし、この群(抗体陰性かつ広範囲の萎縮性胃炎)は、胃癌のハイリスク群であり、年に1回の胃カメラによる追跡が必要なグループです。
このあたりのコンセンサスが、十分に得られていないことから、ABC検診に頼りすぎて、胃カメラを省略してしまうと、不幸にして胃癌を発症した場合に、発見が遅れてしまう危険があるわけです。
なお、そもそも40歳以上の胃癌検診対象者は、HP除菌治療後も胃癌を発症しやすいわけですし、特に消化性潰瘍の既往がある方、早期胃癌の内視鏡切除後の方は、HP除菌治療後も胃癌発症のリスクが高い訳で、HP除菌治療後も、年に1回程度の胃カメラが必要とのことでした。
当院でも、HP除菌治療後の患者さんに、そのように説明しております。
間違っても、「HPを除菌すれば胃癌にかからない」などと誤解しないようにしてください。

 

高知大学内分泌代謝・腎臓内科、藤本新平先生の「糖尿病の診断と治療最前線」の講演の中で、糖質制限食(糖質制限ダイエット)が巷ではブームであるが、極端な炭水化物の制限は危険であるという話がありました。
糖質制限食は、1921年のインスリン発見前は、むしろ一般的な治療でした。
日本では、おからを油で揚げて、治療食としていたそうです。
その後、インスリンや経口血糖降下薬などを用いた薬物療法の進歩に伴い、糖尿病患者の食事療法は、「糖質(炭水化物)を摂らない」から「いろいろな栄養素をバランスよく摂取する」へと変化していきました。
糖質制限ダイエットで高名なある先生は、糖質制限食を、自らの著書の中で「新縄文食」と名付けておられました。

極端な糖質制限食は、糖質(炭水化物)に代わるエネルギー源として、蛋白質や脂質を摂取するわけですから、腎臓に負担をかけます。
既に糖尿病性腎症を合併している糖尿病患者さんは、糖質制限ダイエットを行ってはいけません。
また、胃腸障害(下痢など)に悩まされることもあります。
そもそも、日本人として、お米抜きの食事を続けるのは、相当なストレスです。
「糖尿病のコントロールが悪化して、このままではまずい。」という例を除いて、あまり楽観的に考えて、安易に行うのは、避けた方が賢明です。

演者の藤本先生の話に戻りますが、糖質制限食は、肥満の方に対しては、一定の評価がなされるべきとのことでした。
2型糖尿病の患者さんでは、エビデンス不足で、現時点では積極的には勧められないとのことでした。
健常人を対象とした研究では、死亡率、心血管イベントによる死亡率、脳梗塞などが増えたという報告があり、危険とのことでした。

 

京都観光が全くできなかったのが心残りですが、内科学の幅広い領域で、知識を再整理できました。
この企画は、地域の第一線でプライマリケアを担う開業医にこそ、役に立つと思いました。

 

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