アルコール健康障害を考えるフォーラムに参加しました。 |鳥取県鳥取市気高町の内科・呼吸器内科クリニック

アルコール健康障害を考えるフォーラムに参加しました。
アルコール健康障害を考えるフォーラムに参加しました。 2015:11:23:20:40:12

2015年11月23日

11/23に米子コンベンションセンターで開催された、アルコール健康障害を考えるフォーラムに参加しました。
 
外来をしていますと、家族から、「おじいさんは酒ばっかり飲んで、こんなに体調を悪くしても、まだやめないので、先生からやめるように強く言って下さい」などと言われることがあります。
私は、タバコでもアルコールでも、本人が心からやめようと決心しないことには、やめるのは無理だと考えております。
アルコール性肝障害の患者さんには、「肝機能が正常化するまでは禁酒が必要で、肝機能が正常化してからは節酒が必要です。」と説明しますが、それ以上は何も出来ません。
 
それでも、アルコール依存症の診療を行っている先生の話や、アルコール依存症当事者体験談を聞くことが出来るとのことで、参加してみました。
 
結果、参加して正解でした。
最近、行政(鳥取県、鳥取市など)は、アルコール健康障害だけでなく、喫煙問題、薬物依存症、認知症、がん、地域医療などをテーマとしたフォーラムを開催していますが、今回のフォーラムは非常に興味深く、印象に残りました。
 
前置きが長くなりましたが、私が印象に残った内容を紹介します。
 
まず、肥前精神医療センターの杠先生の講演からです。
◯飲酒と発がんについてです。
アルコールを飲むと顔が赤くなる人が飲酒を続けていると、数倍から百倍、がんのリスクが高まるとのことでした。
◯酩酊中の転落死についてです。
70歳未満の、階段からの転落死亡者を、酩酊状態の人と酩酊状態でない人に分けて比較しますと、圧倒的に酩酊状態の人が多いそうです。
家で飲む場合も、外で飲む場合も、階段の上り下りには十分注意が必要です。
◯アルコール依存症とうつ病との合併についてです。
アルコール依存症とうつ病とは高い確率で合併しやすく、うつ病を先に発症し、その後アルコール依存症を発症するケースを「一次性うつ病」、アルコール依存症を先に発症し、その後うつ病を発症するケースを「二次性うつ病」と呼ぶそうです。
一次性うつ病は、うつ病のつらい状況を、飲酒で紛らわせようとしているうちに、どんどん飲酒量が増えて、アルコール依存症になります。
二次性うつ病は、飲酒に伴う自己嫌悪、不安、家庭問題、職場の問題、経済問題などのために、うつ病を発症します。
いずれにしましても、二つを合併している人の場合、抗うつ薬を服用しても、うつ病は良くならず、断酒が必要とのことでした。
◯被災地での飲酒と自殺についてです。
杠先生は被災地に赴かれ、飲酒と自殺の調査をされているそうです。
被災地では自殺者が増えているそうですが、その背景に飲酒問題があるようです。
 
その後、DVD上映、鳥取県断酒会会員の体験談、作家やコメンテーターなどで幅広く活躍されている室井佑月氏をゲストに迎えてのトークショーと続きましたが、プライバシーにかかわる内容が多く、ここでは割愛します。
 
帰りの車の中で、いろいろ考えさせられましたが、喫煙問題、薬物依存、摂食障害などと同様、患者さん個人としても、社会全体としても、飲酒問題の簡単な解決策はなく、私達全員が、危険と隣り合わせで生活していることを自覚するのが、最初の一歩なのかなと思いました。
 
既にアルコール依存症の人は、専門家の治療を受けることが重要であることは言うまでもありません。
 
問題は、このまま飲酒を続けるとアルコール依存症になってしまう人です。
本人も「このままではまずい」と自覚していても、心の問題や社会的な問題を抱えており、自分の意思で節酒することは既に困難となっています。
家族も飲酒問題の知識が豊富なわけではありませんので、間違った対応をしてしまいがちです。
具体的には、説教したり、酒を捨てたり隠したり、反対に目先の優しさで酒を買ってきたりしてしまいます。
本当に酒をやめてもらいたいのなら、家庭不和・離婚覚悟で、「あなたの飲酒のせいで私はこんなに迷惑している。」と断酒・節酒を迫るしかありませんが、現実的には困難です。
 
医者や警察や行政に頼るのは筋違いです。
医者や警察や行政は、アドバイスはできるかもしれませんが、やめさせることは出来ません。
それをやると人権問題です。
 
私は、看護学校で呼吸器の講義をしています。
COPD(肺気腫)や喘息は、タバコが原因もしくは増悪因子ですので、禁煙が必要と教えます。
しかし同時に、「タバコも良くないが、アルコール依存症の方がもっと問題が大きい」と、呼吸器の講義から脱線して話すことにしています。
COPDは喫煙を開始して何十年も経ってから発症しますので、多くは70歳以降で発症します。
そして、一番困るのは喫煙を続けてきた本人で、次が家族です。
それ以外の人は、飲食店などでタバコの煙の被害を受けますが、目くじらを立てる程ではないでしょう。
 
一方、アルコール依存症は、若い時から、あっという間に進行し、発症します。
本人の精神的・肉体的問題(うつ、孤独感、肝硬変、外傷など)、家庭問題(暴力、離婚など)だけに留まりません。
 
職場では仕事仲間とのトラブル、仕事の質の低下などを引き起こします。
退職、解雇となりますと、経済的な問題を引き起こします。
また、飲酒運転、転倒・転落などの犯罪、事故を引き起こすことがあります。
この場合、第三者や警察に迷惑を掛けます。
そして、急性アルコール中毒は、救急隊、医療関係者を疲弊させます。

このように、アルコール依存症は、周囲に多大な迷惑をかける場合があります。
一度や二度なら、飲酒がらみの問題は、日本人の特性上、大目に見る風潮がありますが、繰り返し周囲に迷惑を掛けるのが、アルコール依存症の特徴でもあります。
 
看護学校の学生は女性が多く、将来、結婚して家庭を持った後に、夫の飲酒問題で苦労して欲しくないので、将来、大酒家(大酒飲み)になりそうな人との結婚には注意するように話しています。
ただ、種々の要因でアルコール依存症は発症しますので、あくまで、将来の医療関係者として、問題意識を持って欲しいというのが主な目的です。
 
繰り返しになりますが、精神病院に入院し、精神科医などによる専門的治療を受けるのは別として、多くの人が該当すると思われる、ハイリスク飲酒の人に対して、医師が治療することは出来ませんし、特効薬もありません。
本人が「このままではまずい」「本当に酒をやめたい」と心から思わないと、難しいでしょう。
 
当院の本棚に、飲酒問題に関する本を置いておりますので、興味のある方はお読み下さい。
「酒のない人生をはじめる方法」「飲まない幸せを手にする方法」「どうやって飲まないでいるか」「おサケについてのまじめな話」などがあります。
 
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